9月某日 虫の音

夏が終わったな、と思うのは、日暮れが早いことに気付いたとき、空の青が変わったとき、そして夜に、虫の音を聞いたときである。特に最近は暑すぎるのか、夏の間は昼でも夜でも、セミ以外の虫を見かけない。蚊すら減ったような気がする。そんなふうだからこそ、どれだけ暑さが続いていても、虫の音を聞くと秋だな、と感じる。

夜、緑の多いところで足を止めて耳を澄ませてみる。すると、五、六種類の虫の音が聞こえる。本当にいろんなやつがいる。不思議なリズムを刻んでるのもいれば、ちょっと音痴だとか、ボリュームが大きい、頑張りすぎ、というやつもいる。一音、抜けたりすることもある。虫が鳴くのは、縄張りを主張しているからだ、という話を聞いたことがあるが、だとすると世にも美しい縄張りの主張もあったものである。

そしてふと、自分がやってるのも似たようなことだよな、と思う。この世にはもうすでにたくさんの美しい、楽しい、面白い音があって、そういうことを考えると、もうこれ以上、自分のすることなどなく、それどころか無意味なことのようにも思えるけれど、しかし意味があるとかないとかではなく、ただ生まれてきた以上は、鳴くのだ。それを聞く人もいるはずなのだ。そうして、秋が終われば人知れず世を去るのだ。

ふと足を止めた場所でそんなことを思う。そういうことも含めて、秋である。


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