最近増えたものといえば、ひとりでしゃべってる人である。もちろん、あれはハンズフリーで電話をしているのだ、ということは知っている。知ってはいても、ひとりでしゃべってる人を見かけると、ちょっと怖い。
しかし、なぜひとりでしゃべってる人を見ると「怖い」と思うのだろうか。別にしゃべってるだけで害はないはずなのに。「会話は実在する誰かとするもの」という前提があり、「実在しない人と会話をする」というのは普通の人間はやらないことで、それをやっている人はもっと怖いことをするかもしれない、と心のどこかで思っているのだろうか。こうやって文字にしてみると、その考え方のほうが、よほど怖い気もする。
そして考えてみれば、実在しない人と会話していることは、(個人的には)とてもよくある。小説の筋が行き詰ったりしたら、「さあ、困ったぞ」「ここからどうすればいいんだね?」「うーん、それだとよくない。よくないぞお!」と、ひとりでしゃべることも少なからずある。あるいは、なにか困ったことがあるという場合、「架空の友人」に人生相談を持ちかける、などということもないでもない。それで悩みが多少なりとも解決したりすることもある。もしかして、ひとりでしゃべってる人の中には、ハンズフリーを装って架空の知人に相談している人もいるかもしれない。
ところで先日、夜にふらふら歩いていたところ、やはりひとりでしゃべってる人がいて、しかも顔を下から携帯のライトで照らし、「ひひひ」などと笑っておられるものだから、本当に怖かった。夜道でひとりでしゃべるときには、笑いは組み合わせないでいただきたい。