『ワイルド・スピード』シリーズといえば、ヤンキーがバーベキューする映画として知られているが、うちの近所にもそういう家がある。休日になれば、恐らく建売りの家の前に建築関係だと思われるお兄ちゃんたちが集い、コンロで肉などを焼き、ビールを飲んだりしている。奥さん方は大体、髪は金色で、ノーメイクで眉毛がなく、二人の子供(そこに集う家族の子供は、なぜか大抵二人ずつである)の世話をしたり、叱りつけたりしている。夏であれば、ビニールプールを広げて、子供たちはそこでちゃぱちゃぱやっている。
その、全然知らない人たちのバーベキューを見かけるたび(別に毎日通りかかるわけではないのだが、本当にしょっちゅうやっているのだ)に、「確固たる幸せ」という言葉が浮かぶ。
幸せ、というのはとても曖昧で、人の数ほどあり、本当に青い鳥のようなものなのだし、どんなものでも見た目どおりということはほとんどないが、そのバーベキューが放つの幸せの強度は、とても高い。頑丈な幸せである。自分自身の人生が不幸だとは思わないが、そういう形の幸せには縁がないので、少しうらやましくも思う。
ところで昨年の年末、そのお宅の前を通りかかったら、「餅つき」をやっていた。これも硬くて強い幸せの象徴だ。日本で『ワイルド・スピード』的な映画をやるなら、ラストシーンは餅つきで。