11月某日 ビルの腸

 最近、西梅田のほうに行ったら、新しい、大きなビルが出来かかっていた。ちょうど立ち入り禁止のフェンスを取り替えているところだったので、中の様子がよく見えた。そこは、むき出しのコンクリートと、断熱材と、そしてダクト、コードがこんがらがった、なんというか混沌とした、ちょっと見てはいけないような空間だった。

大阪駅からかなり近い場所なので、恐らくは商業施設になるのだろう。入る店は、きっとハイブランドなのだろう。上層階のほうは金持ちのためのマンションになるのかもしれない。そのお客さんなり入居者なりが入るときには、床にはふかふかしたカーペットが敷かれ、壁も天井もきれいに装飾されて、ちょっと薄暗い素敵な照明が灯り、空調も快適で、かすかにいい匂いがする、そんな場所になるはずだ。

しかし、壁紙一枚、天井板一枚めくれば、そこには、コンクリートと断熱材とダクトとコードが、人間の体における骨とか肉とか血管とか神経のように、ある。普段は見えないけれど、それは確実に存在する。一見、何も感じないように無機的に建っているこぎれいなビルの内側にも、腸としか呼びようもないものが確かにある。そう思うようになってから、都会の見え方が少し変わったような気がした。


投稿日

カテゴリー:

投稿者:

タグ: