8月某日 評価

デパートの地下をぶらぶらしていたら、「●年連続ビブグルマンに選出!」みたいな謳い文句を掲げたお店を見かけた。確か餃子屋だったように思う。正直、ミシュラン関連のものだということは知っていても、ビブグルマンが正確には何なのか、よく分からない。しかし、「●年連続ビブグルマンに選出!」と書いてあることによって、ちょっと食べてみたいな、というぐらいの気持ちにはなる。「ビブグルマンがなんぼのもんじゃい」と思わないわけでもないが、もしその餃子が本当に美味しい、誠意を持って作られた素晴らしいもので、それなのにただ知られるきっかけがないから人気がない、ということなら、そんなもったいない話はない。だったらビブグルマンでもなんでも利用するのは当然の話である。

しかし、そんなことだからいつまで経っても「ビブグルマン的なもの」がはびこるのではないか、という気もする。

ついこういうことを考えてしまうのは、自分が身を置いている業界でも事情が同じだからだ。本屋に行けば「●●賞受賞!」とか、「●●氏絶賛!」とか、あるいは「●万部突破!」とか、こちらに表紙を見せて並んでいる本には、そういう帯が巻いてある。これらはすべて、「こんなに多くの人に評価されている本だから面白いですよ」という意味である。

悪いわけではない。本を売りたいというのは、儲けたいという以上に、価値があるものを届けたい、ということで、そしてほとんどの場合、その本に関わったすべての人たちは一生懸命である。だから、売れるためならなんでもやりたい。その結果が、「●●賞受賞!」「●●氏絶賛!」「●万部突破!」の帯である。気持ちは分かる。ただ、そういう「!」にぐいぐい来られるような状況は、ちょっとしんどいな、とも思う。

ところで件のデパ地下には最近、新しいスイーツのお店が出来た。そこの謳い文句は「イタリアのマフィアが愛したスイーツ!」である。それを見かけるたびに、ちょっと笑うし、心が和む。同じ「!」でも、しんどくない。


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