梅田の地下街を歩いていると、すごい行列ができていた。普段、そういう行列が出来るような場所ではないので、何事かと思って見てみると、どうやら日韓台混成アイドルグループによる「ハイタッチ会」らしい。
「ハイタッチ会」ってなんだ、とは思ったが、しかしそんな疑問すら掻き消したのは、その行列の長さである。多分、百人はいたと思う。女性ばっかり、十代から、多分五十、六十代の人もいただろう。しかも、その時点で「第二部」だった。
その、アイドルの人たちは、それまでも、それ以後も、ひたすらハイタッチを繰り返していたわけである。たぶん、誰しもそうだろうけれど、ハイタッチって、普通は一回きりのものでそう何度も繰り返さないし、まして何時間も続けることはない。想像するしかないが、仮に一時間もハイタッチを繰り返したら、多分、肩や首がおかしくなるに違いない。
しかも、その列に並んでいる女性たちは、そのハイタッチの一瞬に、色々なものを籠めるわけである。それは応援であるかもしれないし、「あなたがいるから生きていられるのだ」という切実なものかもしれない。また、妄執というような感情もあるだろう。重い、腰の入ったハイタッチである。アイドルは、そんなハイタッチを、ひたすら笑顔で続けるわけである。
アイドルが優れているのは外見だ、と思いがちだが、アイドルをアイドルたらしめるのは、実はその途方もない体力と精神的な耐久力なのかもしれない、と長い行列を見ながらそんなことを思った。
ちなみにそれから数時間後、用事を済ませて同じ場所を通りかかったら、さっきよりも長い行列ができていた。「第三部」であるという。アイドルすげえ。