2月某日 仕事場

自分の部屋でなければ書けないタイプだ。ひとりになって、ドアを閉めなければ、一文字も進まない。ファミレスや、ファストフード店や、喫茶店では、ダメ。これは昔からそうで、たとえば勉強するときも、図書館だと、どうもはかどらなかった。理由ははっきりしている。周りが気になって仕方がないからだ。

 この間も、ちょっと時間が空いたのでマクドに入って仕事をしようかと思ったところ、後ろの席に座っていた、高校生ぐらいの女の子二人組の会話が耳に入った。二人は小学校からの付き合いらしく、これまでの二人の歴史をしみじみと語り合っていた。そして二人とも、目下恋愛に悩んでいるらしい。二人とも配信をしている男性と付き合っているようで(今っぽい! と思った)、他のファンもいる手前自分と付き合っていることを公表できない(こういう話は昔からある! と思った)、などと語り合い、そして感極まって涙声になっていた。

 こうなると、こちらも仕事どころではない。振り向きたいのを必死で堪えて、しかし意識と耳は完全に後ろの席に向いていた。女の子たちは小一時間ほど、嘆き合い、励まし合い、そして昔から連綿と続くあのセリフ、つまり「どうしてあんな人、好きになっちゃったんだろう」という言葉を残して、去って行った。

 いい時間であった、とこちらも席を立った。もちろん、仕事はちっとも進まなかった。


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